過去の記録との比較 区間別編

コース変更や距離の再計測があると過去のタイムとの比較がわかりづらくなるので、90年代以降に使われた各区間のコースについて私の考え方をまとめてみました。

参考資料は主に「写真で見る箱根駅伝80年」を使っています。

コース変更についての考え方は色々あるかも知れませんが、私は以下の通りに考えています

@ 同一のコースで複数の距離表示がある場合は、最新の計測距離を正しい物とします

A 距離変更があった時は、距離変更がされた年と、その前年との差を変更された距離とします

 

1区

現在のコースは72年から使われています。

距離は当初は21.8km。

再計測により、79年〜04年が21.3km、

05年〜14年が21.4km、

15年〜が21.3kmと表示されています。

 

2区

在のコースは83年から使われています。

距離は当初は22.7km。

再計測により、91年〜04年が23.0km、

05年〜14年が23.2km、

15年〜が23.1kmと表示されています。

 

3区

現在のコースは72年から使われています。

距離は当初は22.2km。

再計測により、79年〜04年が21.3km、

05年〜14年が21.5km、

15年〜が21.4kmと表示されています。

 

4区

90年代以降では06年にコース変更がありました。

 

4区06年〜コース

05年までと比べて2.5km短縮されました。

05年までの最後の2.5kmがそのまま削られています。

距離は18.5km。

06年以降、再計測があったものの、距離表示の変更はなく、18.5kmと表示され続けています。

 

4区84年〜05年コース

距離は当初は20.9km。

再計測により最後の1大会の05年だけが21.0kmと表示されています。

 

4区06年コースと4区84年05年コースの比較

@ 84年〜05年コースの最新の距離は21.0km

A 84年〜05年コースと06年〜コースの距離の差は2.5km

@Aを考慮して換算するべきだと思います。※1

距離の差2.5kmの部分は上り坂が含まれている事も考慮するとなお良いと思います。

 

5区

チャクチャややこしいのが5区です。

かなり複雑なので長文で説明します。

90年代以降に使われたコースは15年〜コース、06年〜14年コース、00年〜05年コース、84年〜99年コースと4つも存在します。

 

5区15年〜コース

距離は23.2kmと表示されています。

函嶺洞門を迂回するルートになったので、前年までと比べて約20m長くなっています。

しかし、再計測が同時に行われ、距離表示は0.2km短くなっています。

「約20m延長」というのは、報知新聞や陸上雑誌などに書かれていました。

約のつかない、正確な距離情報は陸上雑誌などにも載っていませんでした。

 

5区06年〜14年コース

距離は23.4kmと表示されています。

距離変更前の05年までと比べて、2.5km延長されています。

05年までの4区の最後の2.5kmがそのまま5区に移行しました。

 

5区00年〜05年コース

距離は当初は20.7km。

再計測により、最後の1大会の05年だけが20.9kmと表示されています。

コース変更前の99年以前と比べて、距離はわずか4mだけ長くなっています。

変更前のコースでは、後半に国道1号から外れて旧街道を走るのに対して、00年〜05年のコースでは国道1号をそのまま走り続けます。

国道1号と旧街道の分岐地点から合流地点までの距離は、00年以降は488mです。※2

 

5区84年〜99年コース

距離は当初は20.6km。

再計測により、91年〜99年が20.7kmと表示されています。

コースの後半に国道1号→旧街道→国道1号と走ります。

国道1号と旧街道の分岐地点から合流地点までの距離は484mです。※2

旧街道を通る事がわずかにショートカットになっています。

 

4つある5区の各コースの距離の違いをわかりやすくまとめると、2015年現在のコースを基準に、1つ前のコースは約20m短く、2つ前のコースは約20m+2.5km短く、3つ前のコースは約20m+2.5km+4m短いと言うわけです。

 

5区15年〜コースと5区06年〜14年コースの比較

主な違いは、15年〜コースの方が距離が約20m長くなっている事です。

約20mの距離の差は、選手が時速20kmの速度で走ったとすれば約3.6秒になります。

正確に20mではなく約20mなので、タイムで3秒と考えるべきか、4秒と考えるべきかは難しいところです。

 

5区06年〜14年コースと5区00年〜05年コースの比較

主な違いは、06年〜14年コースは05年までと比べてスタート地点が後方に2.5km移動したため、その分長い事です。

この2つのコースを比較する場合は、

@ 00年〜05年コースの最新の距離は20.9km

A 00年〜05年コースと06年〜14年コースの距離の差は2.5km

@Aを考慮して換算するべきだと思います。※1

ただし、アップダウンの激しい5区のコースを全体のタイムから換算して、正しい比較が出来るのか?という疑問もあるとは思いますが。

(私は過去に走った選手の走力や区間タイムから、信頼出来る比較が出来ると思っていますが)

 

5区00年〜05年コースと5区84年〜99年コースの比較

主な違いは、00年〜05年コースの方が距離が4m長い事です。

4mの距離は、スピードを時速20kmとすれば0.72秒の差になります。

 

6区

5区の次に複雑です。

90年代以降に使われたコースが3つ存在します。

 

6区15年〜コース

距離は20.8kmと表示されています。

函嶺洞門を迂回するルートになったので、前年までと比べて約20m長くなっています。

5区と同様に再計測が同時に行われていますが、5区とは違い距離表示は前年までと変わりません。

5区と同様に延長された距離は「約」20mとしか発表されていません。

 

6区00年〜14年コース

距離は当初は20.7km。

再計測により、05年〜14年が20.8kmと表示されています。

コース変更前の99年以前と比べて、距離はわずか4mだけ長くなっています。(詳しくは5区の項目に書いてあります)

 

6区86年〜99年コース

距離は当初は20.6km。

再計測により、91年〜99年が20.7kmと表示されています。

 

6区15年〜コースと6区00年〜14年コースの比較

20mの距離の違いがあるので、選手のスピードが時速20kmならば、15年〜コースの方が約3.6秒余計にかかります。

 

6区00年〜14年コースと6区86年〜99年コースの比較

4mの距離の違いがあるので、選手のスピードが時速20kmならば、00年〜14年コースの方が0.72秒余計にかかります。

 

7区

現在のコースは86年から使われています。

距離は当初は21.2km。

再計測により、05年〜が21.3kmと表示されています。

 

8区

現在のコースは72年から使われています。

距離は当初は22.2km。

再計測により、79年〜04年が21.3km、

05年〜14年が21.5km、

15年〜が21.4kmと表示されています。

 

9区

現在のコースは83年から使われています。

距離は当初は22.7km。

再計測により、91年〜04年が23.0km、

05年〜14年が23.2km、

15年〜が23.1kmと表示されています。

 

10区

90年代以降では99年にコース変更がありました。

 

10区99年〜コース

後半に日本橋を通るルートになり、前年までと比べて1.7km延長されました。

距離は当初は23.0km。

再計測により、05年〜14年が23.1km、

15年〜が23.0kmと表示されています。

 

10区72年〜98年コース

距離は当初は21.8km。

再計測により、79年〜98年が21.3kmと表示されています。

 

10区99年〜コースと10区72年〜98年コースの比較

@ 72年〜98年コースの最新の距離は21.3km

A 72年〜98年コースと99年〜コースの距離の差は1.7km

@Aを考慮して換算するべきだと思います。※1

 

 

※1

キロメートル単位で大きく距離が変わった時は、その区間全体のタイムから換算するのが良いと思いますが、本文中で書いたよりも厳密な考え方もあります。

それは、コース変更後に再計測が行われ、距離表示が変わった場合、過去のコース同士の換算にもその距離を反映させる事です。

 

例として1996年に早大の小林雅幸選手が5区84年〜99年コースで出した1時間10分27秒という記録を、本文中のやり方で5区15年〜コースのタイムにしてみます。

84年〜99年コース→00年〜05年コース

0.72秒を加算します。

1時間10分27秒72になります。

 

00年〜05年コース→06年〜14年コース

2.5km長い距離に換算します。

1時間10分27秒72÷20.9×23.4=1時間18分53秒42・・になります。

 

06年〜14年コース→15年コース

3.6秒を加算します。

小数をカットして、1時間18分57秒になります。

 

しかし厳密な考え方だと、少し計算が変わってきます。

5区の現在のコースである15年〜コースは、それまでの06年〜14年コースよりも約20m長くなっていますが、再計測の結果距離表示は23.2kmとなりました。

と言うことは、06年〜14年コースの最新の距離表示は23.4kmですが、実際には23.18kmとした方がより正確と言えます。

つまり、00年〜05年コースから06年〜14年コースに換算する時に使う数値は、区間タイム÷20.68×23.18を用いた方がより正確と言えます。

この考え方で小林雅幸選手のタイムを現在のコースのタイムにしてみると、1時間19分02秒になります。

本文中の考え方よりも5秒も変わってきます。

この厳密な考え方には問題もあります。

本文中の考え方ならば、現在の5区の距離表示が、例えば23.1kmや23.5kmに変わっても、小林選手のタイムは現在のコースならば1時間18分57秒です。

しかし、厳密な考え方だと、現在のコースの距離表示が変わる度に、「前の前のコース」や「前の前の前のコース」の記録の価値まで変わってしまいます。

非常に複雑なので、本文中にはあえて書きませんでした。

駅伝の距離表示は完全に正しい訳ではないので、個人的にはここまで厳密に考えるのもナンセンスだと思っています。

 

 

※2

資料は月刊陸上競技2000年1月号の箱根駅伝観戦ガイド

 

 

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